約定された行使価格で外貨を買う権利を金融機関から買い、それと同時に約定された行使価格で外貨を売る権利を金融機関に売るという通貨オプション取引を金融機関から勧められるままに契約してしまい、最近の円高で多額の損失を被るケースが増えてきました。
このような取引においては、中途解約することができないとされており、金融機関が解約に応じたとしても、多額の違約金を請求されることになるため経営者にとって大きな問題となります。
本来、通貨オプション取引は、為替変動リスクをヘッジするためのものであり、外貨建て取引をしていない企業にとっては不必要な取引であることから、適合性原則に違反するものと考えられます。また、外貨建て取引をしている企業でも、外貨建て取引量を遥かに超える通貨オプション取引をしている場合も、やはり適合性原則に違反するものと考えられます。
このような場合、為替変動リスクをヘッジするためという本来の目的から離れ、投機目的と言わざるを得ません。金融機関が顧客に通貨オプション取引を勧める際、どのような損失を被るリスクがあるのかについて説明が不十分であったり、そもそも、外貨建て取引をしておらず、リスクヘッジをする必要がないことを知りながら、通貨オプション取引を勧めたケースもあります。
さらに、金融機関が融資と絡めて通貨オプション取引を勧める等、独禁法における「優越的地位の濫用」に当たるケースもあります。解決方法としては、金融ADRという裁判外紛争解決手続を利用した解決が考えられます。実際、問題のあるケースでは、金融機関に損失の一部を実質的に負担させることで解決することが増えています。
詳しくは、弁護士にご相談下さい。
中途解約をした場合、多額の解約清算金の支払義務を負担します。
この解約清算金を支払わない場合には、銀行から借り入れている他の債務も一括で返済しなければならないとされています(「期限の利益喪失条項」がついています。)。
このように、中途解約すると現実的に返済が不可能な金額の返済を求められるため、普通に中途解約することは困難です。
損失補填が禁止されているため、簡単には免除や補填はできません。
紛争解決機関(裁判所やあっせん相談センターなど)において、解決することが必要となることが普通です。
裁判やあっせん手続などがあります。
① 裁判では、裁判所が証拠などに基づいて判決をして紛争を解決します。
※ 裁判では時間と費用がかかるという問題もあります。
② あっせん手続では、中立のあっせん委員が当事者の間に入り、話合います。
※ 費用が低額で、迅速に解決されます。
※ 当事者の主張に隔たりがあるなど紛争性が高い事案には不適当です。
銀行側と裁判等をしている間は、オプション行使などをしないという暫定的和解をして、その後に裁判やあっせん手続をします。そのため、裁判等をしている間は、差額行使決済金などを支払わなくてもよいことになることが通常です。
また、銀行側にオプション行使を禁止させる仮処分命令などを裁判所に発令してもらうという方法もあります。
あっせん手続(ADR)を利用して解決した場合には,お互いの合意で紛争を解決できるため,あっせん手続後もこれまで通りの取引を継続できるケースが多いといえます。
銀行側としても,通貨オプションを勧誘して顧客に損失を与えたという負い目がありますので,今後の銀行取引には影響がないという前提で考えてよいと思います。
解決方法や今後の取引への影響についても,弁護士へご相談ください。