下請事業者に責任がないのに,発注した物品・作成物の納期における受領を拒否することです。
例えば,下請事業者が既に受注部品を完成させているにもかかわらず,自社の生産計画を変更したという理由で,下請事業者に納期の延期を通知して,当初の納期に受領しなかった場合などがこれに当たります。
発注した物品等の受領日から,60日以内で定められている支払期日までに下請代金を支払わないことです。
契約などで支払期日が,受領日から60日を超えて定められていても,受領日から60日目までに支払わなければ,支払遅延に該当します。
支払遅延が生じている場合には,年14.6%の遅延損害金を支払う義務も負います。
下請事業者に責任がないのに,発注時に決定した下請代金を発注後に減額することです。
消費税相当額を支払わないことや,下請代金の総額はそのままにしておいて,数量を増加させる行為などもこれに該当します。
下請事業者に責任がないのに,発注した物品・作成物を受領後に返品することです。
受領拒否との違いは,受領拒否は下請事業者の給付を拒むのに対して,返品下請事業者の給付を受領した後に返却することであり,行為の時点が違います。
発注する物品・作成物・役務に通常支払われる対価に比べ,著しく低い下請代金を一方的に定めることです。通常支払われる対価とは,同種又は類似したものの一般的な市価です。
例えば,部品の単価決定に当たって,下請事業者に1個,5個,10個制作する場合の見積書をそれぞれ作成させて,10個製作する場合の安い単価で,1個発注したケースなどがこれに該当します。
下請事業者に発注する物品の品質を維持するなど,正当な理由がないのに,親事業者が指定する物(製品,原材料,マンション等),役務(保険,リース等)を強制して購入,利用させることです。
例えば,自社製品のセールスキャンペーンに当たり,各工場の購買や外注の担当部門等を通じて下請事業者に対し,下請事業者ごとの目標額を定めて,自社製品の購入を要請し,購入させたケースなどがこれに該当します。
親事業者の違反行為を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由に,その下請事業者に対して取引数量の削減・取引停止など,不利益な扱いをすることです。
下請代金の支払遅延,下請代金の減額,買いたたき等の行為も不利益な取扱いに含まれます。
親事業者が有償支給する原材料等で,下請事業者が物品の製造等を行っている場合,その原材料等が用いられた物品の下請代金の支払日より早く,原材料等の対価を支払わせることです。
例えば,親事業者が,下請事業者に対し,原材料等を有償で支給していた場合に,原材料等を加工して納入するまでの期間を考慮せず,一部の原材料等について,当該原材料等を使用した給付に関する下請代金の支払期日よりも早い時期に下請代金から当該原材料等の代金を差し引いた場合が該当します。
下請法違反の事実が発見された場合には,公正取引委員会が勧告するという仕組みがとられています。
この勧告については,単なる行政指導で,法的な強制力はないとされています。
もっとも,勧告された対象企業は,勧告に従った措置をとることが通常で,勧告されたにもかかわらず無視するという企業はまずないといわれています。
したがって,法的な強制力がないといっても,下請事業者が,わざわざ親事業者に対する裁判を起こして,判決を取得するなどといった手間が不要となります。
下請法の違反については,下請事業者からの申告に頼るのではなく,定期的な書面調査により違反行為を発見する仕組みとなっています。
そのため,下請事業者から申告があったかどうかが親事業者には分からずに,調査が進められることになり,下請事業者としても,心理的に申告しやすいといえます。
下請事業者から代金支払請求の訴訟をする場合などと比べれば,格段に使いやすい制度であるといえます。